いつのまにやらもう七月というわけで、今回は夏らしく東シナ海のお話です。
日本の最西端はご存知のように、南西諸島のひとつ、与那国島だよね。起伏に富んだ土地と豊かな森、海岸沿いの放牧地ではヨナグニ馬がのんびりと草をはむ風景が広がる周囲27.5キロの小さな島は、晴れた日には肉眼でも台湾を見ることができる国境の島でもある。
アクセスが悪いのであまり観光客は多くない。そんな与那国島を有名にしたのは、島の南側の沖合い100メートルの海底に広がる遺跡ポイントとよばれている場所だよね。与那国の『海底遺跡』といえば、聞いたことがあるひとも多いと思う。
水深25メートルの海底から立ち上がったピラミッド状の地形には階段状の城壁や広場らしき場所、ループ状の道路やアーチなど自然の造形にしては、「ん?」と思うような不自然な地形が広がっている。琉球大学理学部物質地球科学科の木村政昭教授を中心に1992年の調査開始以来、この海域を中心に潜水調査をはじめレーザービームやシーバットなどを用いたさまざまな実測が行われた。その結果、どうやらこれは人工的な構造物であるということ、しかも1万2000年以上前に作られたのではないかということがわかってきた。
もともと沖縄本島をはじめとした南西諸島は琉球海嶺と呼ばれる海底に連なる山脈の上にのっているんだけど、現在の形に落ち着くまでに何回か隆起を繰り返してきたらしい。
南西諸島ののっている琉球海嶺は、200万年前はユーラシア大陸の東の縁だったんだけど、その後水没してしまった。そして20万年前から2万数千年前までの間に、中国から沖縄本島にかけて琉球古陸と呼ばれる長大な陸橋が出現した。木村教授は海底遺跡が建造されたのはこの時期ではないかと著書の中で書いている。やがて1万2000年前、海面上昇とともに大規模な地殻変動が起こり、琉球古陸は現在の南西諸島を残して水没したという。
考古学者の多くは海底遺跡が人工建造物であることを認めないというけど、海洋地質学や地震学が専門の木村教授の説は説得力がある。私も二年前、実際に与那国沖の遺跡ポイントに潜って自分の目で確かめてきたんだけど、う〜ん・・・かぎりなく人工物に近いような気がするなあ。ちなみに一緒に潜ったダイバー達の意見は、自然にできた説と人工物説と半々ぐらいだった。
さてここで話はいきなり海底油ガス田問題の件で中国ともめている東シナ海の排他的経済水域に飛ぶ。
東シナ海の海底はユーラシア大陸からなだらかに傾斜して、沖縄トラフと呼ばれる窪みへと続いている。沖縄トラフというのは、南西諸島の西側に平行して走る長さ1200キロの細長い窪みのことで、その中軸は地殻の奥深くの裂け目になっていて、台湾東北部のイーラン平野から、雲仙普賢岳の下を通って瀬戸内海に抜け、琵琶湖の下を通って日本海東縁をとおり、北極を経て大西洋中央海嶺へ続いている。こういった地形の構造からみて、沖縄トラフとその周辺はマグマ溜まりが連なった巨大なガスベルト帯になっていて、沖縄トラフはこのガス圧が抜けて大陥没が起きたために生まれた窪みなんだそうな。
中国としては沖縄トラフまでを大陸棚だとして、沖縄トラフを日本との境界線だと主張しているよね。自分たちには東シナ海の大陸棚のすべての資源に対して権利があるので、件の海底油田も中国のものだと言っているんだよね。
かたや日本の主張は、大陸棚は沖縄トラフどころか南西諸島をこえて太平洋まで続いている。だからお互いに中間線で手を打ちましょうというもの。
地道に沖縄トラフの地質調査をしてきた木村教授によると、沖縄トラフの地質構造は大陸棚や南西諸島と同じ。さらに大陸棚は南西諸島を越えた太平洋まで伸びているという。
つまり日本列島も西南諸島も大陸棚の上にのっかっているってことなんだよね。
与那国の海は水深30メートルまでクリアに見えるほど美しい。
でも島の周りを我がもの顔で海洋調査する国があったり、数十隻もの漁船団がデモをしたりと、なにやら最近の東シナ海はきな臭い匂いが漂っているよね。与那国近海じゃないけど、イギリスで同時多発テロもあった。対立の構図は根が深い。
海底遺跡を調べてゆくうちに、一万年以上も前に高度な巨石建造物を作る技術をもった文明が存在していて、それは縄文ともポリネシアの島々とも密接なつながりがあった可能性があることもわかってきた。沖縄や東南アジアには同じパターンの洪水神話が存在するのも関係あるのかな。
地道な科学的な調査によって少しずつ表に出てきた事実。もしそれが真実なら、文化や人種なんて、私たちが思っているよりもずっと流動的なものなのかもしれない。
遺跡ポイントもふくめて、西太平洋の海底の地質構造をさらに詳しく調べることで、古代史はもちろん、文化や無意識に刷り込まれてきた枠組みを見直すきっかけになるんじゃないかな。少なくとも、海底の地質調査を徹底することが、確実に国益につながるってことは、中国の大陸棚説の件をみればわかる。
でもこうした地道な研究には、なかなか予算がつかないのだとか。軍事力増強だけが国力じゃないよね。ぜひこうした調査研究に予算をつぎ込んでくださいね〜。
もっとも、その成果を使いこなすことができなければ、豚に真珠・・・か。
参考資料
海底宮殿 木村政昭著
文責・キョーコ
※ この原稿はH17.7/9、「現役雑誌記者による、ブログ調査分析報道」さんに寄稿掲載されたものです。